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麻酔リスク

数年来の懸案がありました。
子宮の病気のワンちゃんがいます。
診断名は子宮蓄膿症。普通であれば診断できた時点で手術をするべき病気です。
手術をしなければ治ることが無く、命に関わる問題が起こります。

しかしこの子は成犬にも関わらず体重が1kgほどで、食欲不振を繰り返す高齢犬でもあります。
問題はそれだけではなく、心臓にも異常がありました。
幸いにして子宮蓄膿ではありながら、膿が外に少しずつ出てきていましたので、どうにかここまで持ちこたえられたのだろうと考えています。

飼い主さんは手術しか治療方法がないことは十分にご承知でしたが、なかなか決断にお困りの様子でした。例え手術をしなくてこの病気が原因で命が尽きることがあってもそれは納得していると消極的なご意見でした。

当院に来られるまでにいくつかの動物病院にもご相談をされたようでした。
積極的に手術をしましょうと応えたのは当院だけのようです。
他ではやらない方が良いというご意見だったようです。
確かに大変難しい決断が必要な場面です。
麻酔をかけた段階でいろいろと困った問題が起こっても不思議ではなく、手術が完了できるか、終わった後に合併症を避けることができるかは何とも言えない状況でした。

年末に飼い主さんと長くお話をいたしました。
そこで尽きるかも知れない命考えますと軽々しくも楽観的に手術を勧めることはできません。
それでも慎重に言葉を選びながら、手術をしましょうとご相談をしたのです。

これまで何度も手術のお話をしましたが、するかしないかの決断には至りませんでした。
ワンちゃんがどうにか低いレベルではありますが調子を保ってくれていましたからここまでくることができたと思います。
普通であればまず診断が本当に正しいのかを再検討しなければならないところです。

そしてとうとう手術をすることになりました。

麻酔のこと、手術のこと、そして術後管理のこと。
乗り越えなければならない多くの課題がありました。

すでに点滴をはじめるところで、興奮して舌の色が悪くなり、呼吸が正常ではありません。
しかし、スタッフが皆冷静に手術を進めていきました。
これまで手術成績は良い方なのですが、今回は最後まで安心はできませんでした。

皮膚を切開して、止血をしながら変化した子宮を取り出します。
卵巣子宮全摘出手術です。
かなり大きな子宮でしたが、腫瘍など他の変化はなさそうです。
最後皮膚縫合のときに麻酔担当がゆっくりと覚ましにかかります。
全てが終わってからほぼ3分程度で覚めました。

小さな小さな体を温めて、さらに暖かい部屋で安静です。
その子は舌を少し出したまましばらく立ったままこちらを見ていました。

手術から3時間後に飼い主さんがご面会に来られました。
トコトコと歩いて飼い主さんに近づいていきます。
少しだけ食事も取りました。

長く続いた課題がやっと終わった、そんな心境です。
おそらくは手術をすることを迷いに迷われた飼い主さんも同様のことでしょう。
まだ10歳です。これからです。

あとは術後管理をしっかりとしければ。
それにしても長い一日でした。

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