« 2013年9月 | トップページ | 2013年11月 »

2013年10月

夜中の貴重な体験

だんだんと寒くなってきましたね。
11月というと晩秋でしょうか、初冬でしょうか。

ところで私事ですが、少し前に大変貴重な体験をしました。
夜中に背中に激痛が走り、寝ていられないどころか、立つことも座ることもできない状態になりました。その痛みは突然に襲ってきたわけではなく、鈍い痛みからだんだんと強くなってきた感じでした。最終的にこの痛みは鋭いと表現するようなものではありませんでしたが、ちょうど左の背中のベルトの上あたりに名刺のサイズくらいの面積に何とも言われないほどの痛みがありました。

以前に健康診断でシュウ酸カルシウムが反応しているとの結果をもらったことを思い出し、これは腎臓の痛みで、原因はシュウ酸カルシウムによるものだろうと推測してみました。

とりあえず、このままでは翌日の仕事に差し障りがあると思い、夜中でしたがどこか病院に行かなければと脂汗をかきながら考えていました。
痛みがはじまったのが夜中の3時30分頃。どうにもならなくなったのがそれから1時間後の4時30分頃。
救急車を呼ぶべきか、イヤ、救急車もすぐには来てくれないほどに忙しいはずだと思い、まずは#7119に電話をしました。
救急車を呼ぶべきかを訪ねる電話番号です。
自らが出した診断名が的確かはそのときには定かではありませんが、一応こう思っていますと伝え、すると3件ほどの病院を紹介されました。
言われたとおりの順番に電話をかけてみると、驚いたことに、全てに断られました。

なるほど、こう言うことなのか。
演技でも何でもなく、本当に息も絶え絶えで電話をかけているにも関わらず、こうやって運命は分かれて行くのかも知れないと思うできごとでした。
ならば自分で探すほかないということで、近くにあるERを調べて電話をかけました。
症状を伝え、来てくださいとのこと。
まずはタクシーを捕まえてERまでやっと到着。
タクシーの中でも後部座席から助手席の背もたれにしがみつき、運転手さんとも最低限の会話しかできなく、やっとの思いで受付までたどり着けました。

受付カンターではハガキほどの紙に名前や住所やらを書くように言われましたが、そのような状況で書けるはずもなく、申し訳ないが書くことができませんと床にうずくまってしまいました。

受付の後ろにある車いすを使っても良いと言われましたが、人は座ることもできない状態というものがあるのですね、とてもそれを使って何かが好転するとは思えず、遠慮しました。

受付には数名の患者がいましたが、察するに、僕のように立つこともできず、声を出すこともできないもちろんじっとしていることもできないほどの人は見あたりませんでした。
日中は混雑しているはずの受付も、早朝5時ではほとんどが空席で、長椅子に横になり、順番を待ちました。

その間ももがき苦しみ、七転八倒とはこのような状態なのでしょう、床をのたうち回りたくなるような痛みと格闘していました。

冷酷にも、ただいまの待ち時間というモニタには約1時間と表示されています。
こみ上げてくる胃液は間違いなく絶望と痛みによるもので、吐出さえしませんでしたが、寸でのところではありました。

ようやく名前が呼ばれ、まるで這うように診察室にたどり着くと、女医先生が大丈夫ですか?との問い。
とりあえず思うことを述べますと、ベッドにうつ伏せになってくださいね、エコーで腎臓を見てみますと。
お腹を抱えるようにしか体勢を保てないなかで、どうにかベッドにうつ伏せますと、頭はこっちなんですよね、と逆方向にうつ伏せるように指示され、こんなことも困難になっている自分が情けなくなるくらいでした。

あった!腎臓に石がありますよ。
それははじめからわかっていたじゃないですか、先生。
それを知りたかったのですか。
とは言いませんでしたけど、心の裡はそのようなものでした。

結局石が排泄されるまで待つしかなく、その間に起こる痛みは痛み止めで耐えるしかない。
まあ、そんなものとは知りながら、痛み止めの処方のためにどれだけの時間を費やしたのか。

しかしそれは仕方がないことだと思います。
誰もがこの痛みを正体をはじめから知っているわけではなく、違うものであれば違う治療法が提案されるはずですし、患者が自由に処方薬を使うとなりますと、おそらくは間違った考えから事故も起こりかねない。
だからお医者のような専門の先生が存在する。

薬を投薬され、ベッドを用意しますから寝ていってくださいと、まだ激しい痛みはありましたが診察が終わり、薬も入った後でしたので、この痛みから解放されるのももう少しだろうとやや期待をしながら病院のベッドで休みました。

病院を出る頃、だいたい朝の8時前くらいでしたが、どうにか思うように歩けるようにはなっていて、岐路につくタクシーでは運転手さんとも何気ない会話もできました。

普段はあの女医先生の方にいるわけですが、自身が逆の立場に置かれてみると、いろいろと興味深い心境になるものでした。
とても貴重な体験は、夜の救急外来の体験だけではなく、痛みについてもまた然りでした。

だれが言ったか、この痛みを、陣痛と並ぶ人が体験する3大激痛のひとつと表現する人もいるようです。
インフルエンザでも高熱でも、あまりパフォーマンスを悪くはしてこなかったのですが、この痛みの前には平然としていることは難しいものでした。

まだ問題が解決したわけではなく、これからもいつ襲ってくるかわからない激痛の心配があります。今は堪え難い痛みでもすぐに解決してくれる薬を持っていますから大丈夫です。おそらくは次に痛みが襲ってきても、前よりはもっと平然と振る舞えそうな気がします。
普段の仕事に直結する、そしてとてもよい体験でした。

今日は何を勉強しますか?

少し寒くなってきましたね。
あちらこちらで見かける落ち葉も多くなりましたし、水天宮に続く沿道の並木も例外なく落葉してきています。


最近聞かれて改めて思うことがありました。
「今日は何を勉強しますか?」
普段ですとあまり気にしないタイトルですが、ちょっとドキッとしました。

これは定期的に届くメルマガに書かれていた今朝のタイトルです。
アメリカの獣医師のネットワークであるVeterinary Information Networkからのものです。
そういえばオーストラリアの先生からも長時間労働の中で今日は勉強はしたくない日ですといったメッセージをもらったばかりでした。
きっと過酷な仕事の合間にしっかりと勉強されているのだと思います。

みんな毎日仕事ばかりではなくてしっかりと勉強しているんですね。
知識としてアウトプットばかりの生活もできなくはないかも知れませんが、きっと楽しくはなさそうですし仕事に対する好奇心を持続するのは困難です。

もっと何かしなければと反省しました。
教科書のようなものですと情報の更新が遅くなりますから、新たに3冊のジャーナルを定期購読することにしました。日本まで届けてもらえるか心配でしたが、問題ないというお返事。
これですと新しい内容が読めますし、ちょっとは勉強をした気分になれるかも知れません。

この仕事をしていますと、なまけてしまうことはとても簡単かも知れません。
新しく情報を取り入れずに、すでに持っている少ない知識とわずかな技術だけでもある程度やっていくこともできそうですが、それでは当院に来院するどうぶつ達にもその飼い主様にも安心をご提供することは難しいでしょう。

今日は何を勉強しますか?

これを読んで少し動揺してしまったのは、最近の自分に怠惰なものを見ていたからかも知れません。
寝る時間は確保できているわけですから、もう少し机に向かう時間を増やすこともできそうです。

できるだけ新しい情報に基づいた治療ができるように、そして昔の常識は今の常識ではないこともありますから、しっかりとアップデートして。

来年から新たに獣医師が増えます。
新卒さんですが、とても優秀な獣医師です。
僕が卒業したころよりも新しい知識をいっぱいもっているはずです。
負けないように頑張ろうと思っています。

読書の秋。
もっと勉強をしなければダメだなと思っているところに、何気ないメルマガのタイトルが突き刺さった、そんな朝でした。

ウサギさんの噛み合わせ -不成咬合・毛玉症-

秋の空が広がっています。
それでもまだ風が湿っていて、寒いほどではないところが行楽の秋なのでしょうか。

この時期、動物の毛は冬に向けた変化をします。
そしてこの時期に多い病気もあります。

ウサギさんはげっ歯類と並び、歯が伸び続ける動物です。
ちなみに、げっ歯類にはモルモット、チンチラ、ハムスターなどがいます。
ウサギさんはげっ歯類ではありませんが、前歯も奥歯も伸び続けます。

来院されたウサギさんは食欲がなくなったとのことでした。
お話を聞きますと、硬い物を欲しがらなくはなってきていたけど、食べない訳ではなかったとのことでした。しかし突然、帰宅すると、朝のエサがそのまま残っていて、なんだか元気がなくなっているとのことでした。そして糞もしていない。
飼主さんはいろいろとウサギさんの病気の勉強をされていて、またインターネットでいろいろと調べてもいらっしゃって、こうではないかとの予想をお持ちでした。

歯ではないか。
まず心配されていたのはそれでした。 

ウサギさんを飼われたことがない方には少し不思議な感じがありかも知れません。
自分で見てわからないのか。
そうなのです。ウサギさんの前歯は嫌がりますがどうにか飼主さんにも見る事ができます。しかしながら、奥歯を見る事ができる飼主さんはかなりのウサギさん通だと思います。なかなか見る事ができないのです。

通常噛み合わせが正しくないと、前歯や奥歯が通常の長さを超えて伸び続けます。
不成咬合と呼ばれるものです。
伸び過ぎた場合は、その歯がほっぺたや舌にあたって痛みますので、食欲が減ってきます。このことを飼主さんは心配されていました。

通常、歯の問題で食欲がない場合には、突然の食欲不振は少ないものです。
歯の伸びるスピードというものがありますから。
次第に食欲が減ってくる、あるいは好物がかわるということがあります。

そして、ウサギさんの食欲不振の原因で多いのは、毛繕いで胃にたまった毛玉が詰まってしまって食べなくなるというものです。
毛玉症と言われることが多いのですが、実は食滞といって、毛玉だけではないいろな食べ物が詰まっているわけではなく、動きが悪くなった胃の中で留まっているということもよくあります。

今回のウサギさんは両方の以上がありました。
奥歯には2か所の伸びた歯が見られ、そしてそれによって舌に傷がありました。
さらにレントゲンで検査をすると、食べていないウサギさんの胃は何かでいっぱいです。おそらくは胃の毛玉症か食滞です。

歯はすぐに処置をしました。
伸びているところをカットして、その後でカットした歯の表面を少し滑らかにします。

問題は胃です。
手術が必要か、あるいはお薬等をつかったないか療法で治せるか。
これまで多くのウサギさんの胃の手術を行ってきましたが、早くやるほど早くに元気になってくれます。
しかし、できれば手術をせずに治したいものでもあります。
一番避けたいのは、手術をしないで内科治療を行い、時間が経ってから、やっぱり手術しか解決策がないというようなことです。
手術を避けるがあまり、決断が遅れて、ウサギさんに苦しい思いをさせなければならないことは避けたいものです。

まずは慎重に胃の触診をします。
毛玉症の胃で手術をすぐにしなければならない胃は結構な硬さがあります。
この子はやや柔らかい胃の弾力です。
よく言われる、パン生地の硬さです。
しかしどこかで詰まっていなければ糞は出ているはず。
それが出ていないというのは、何かがおかしい。

造影剤を使って、胃の中にある物が少しは動くのか、少しも動かないのかを検査することにしました。
後で手術して胃を開けるかもしれないので、バリウムは使えません。 
他の造影剤を使って時間ごとのレントゲン写真でし食べてみると、どうにか胃の中の物はわずかながではありますが、動いている様子。
とりあえずは内科治療を行う事にしました。
しかし、後で手術が必要になる可能性はあります。

治療から2日目。
小さなお米のような形をした糞がでました。
水を飲ませたり、胃をマッサージしたり、点滴やお薬や。
3日目になると、数は少ないのですが、丸い普通の糞もみられるようになりました。

飼い主さんもそれを見て安心されていました。
まだ治ったとは言えませんが、よい傾向であることは確かです。
牧草をくわえている姿もみられるようになりましたよ。

もう少し治療は続きますが、飼主さんが早めにサインを見つけて連れて来られたのが良かったと思います。

ちょっと残念なのは、胃は治っても、歯はこれからも定期的に診察をしなければまた食べなくなる事が多いということでしょうか。

もっともっと元気になって、これまでのようにまた食べ過ぎるくらいに食べて欲しいものです。

赤ちゃんと一緒に -犬の大腿骨骨折-

昨日は東京でも30度を超えたようですね。
半袖Tシャツとトレーナーで出勤したのですが、途中で暑くて結局Tシャツだけで自転車をこいでいました。

少し前にお電話をいただきました。
小型のワンちゃんが骨折をしてしまったのだそうです。
近くの動物病院に2件行ったが、治療がすぐにできそうにない。
飼い主さんは治療が難しいと言われるような骨折をした愛犬をとても心配されていました。
そちらでは手術ができますか?
レントゲン写真もそして骨折の状況もよくわかりませんので、簡単に「できます」とは言えませんが、おそらくはできると思いますが、実際には見てみないと何とも。そのようなお返事になってしまいました。

とりあえず行きます。
そうお応えになって、夕方に来院されました。
お母さんと、そして抱っこされた赤ちゃんと、ワンちゃんと。
お母さんは赤ちゃんを抱っこしながら、骨折をしていながらも動こうとするワンちゃんをどうにか制していらっしゃいました。

レントゲン写真をよく見てみますと、足が短めの犬種でありながら、太ももの骨を骨折しています。
確かに関節にもかかっている骨折で、簡単な手術では解決しないかも知れません。

思ったままを飼い主さんにお話をしますと、前の2件の動物病院でも同じようなことを言われ、結局はそこでは手術ができないとのことだったようです。

おそらくは慎重に手術をすればきっとうまく行くだろうと考えて、手術をすることにしました。実際は手術をしてしばらく時間をあけなければ、その成果がわからないこともありますし、やり直しや追加の処置が必要なこともあります。

いわゆるインフォームド・コンセントをしっかりと行い、当日ご一緒に来院されていないご主人にもお電話でお話をし、最終的に手術をすることになりました。

このお母さん、赤ちゃんそしてワンちゃんは都内ではなく、遠く隣県からいらしていました。
お電話でしっかりとそこまで伺えていたら、もっと近くをご紹介できたかも知れませんが、せっかくのご縁を大切にしたいとも思いました。

僕の骨折整復手術数はだんだんと増えて、骨折の整復手術の設備も充実をしてきてはいますが、上手に手術をされる先生は大勢いらっしゃいます。
こんな遠くまで来られなくてもとの思いと、きっちりと治るまでやらせて頂こうという気持ちがありました。

関節に及ぶ骨折とうのは、しっかりとやらないと治らなかったり、その後歩行障害が残ったりします。
レントゲンで何度も手術方法を検討し、どの器具を使うべきかもシュミレーションしました。
うちで主に使えるロッキングプレートは3種類。
(ちょっと専門的になりますが、LCP、ALPS、SOPです。)
今回はALPSの出番です。
今回のような複雑な形の部位の骨折の手術にとても使い勝手がよいプレートです。

麻酔をかけて、慎重にプレートの形を骨の曲線にそって加工します。
加工したプレートを骨に当てて、また加工してを何回か繰り返して、どうにか骨の曲線にぴったりとくる形に整えてから、あとはスクリューで固定します。

入院中はまだうまく歩けませんでしたが、昨日、手術から1か月ぶりに来院され、何事もなかったかのように走り回るワンちゃんがいました。
お母さんは赤ちゃんを抱っこされています。

この仕事をしていますと、お腹の大きなお母さんが、出産をされ、お子さんがだんだんと成長され、そのお子さんがワンちゃんを散歩され、そのような時の流れを見せていただけることがよくあります。
きっと、この赤ちゃんも数年後はこのワンちゃんと走り回っているのだろうと思います。
とにかくいろいろと責任や緊張のある仕事でしたが、今のことろは想定のとおりです。
歩けはしますが、まだ骨折線はレントゲンでしっかりと残っています。
この線が消えて、骨が完全にくっつくまではこれからもしっかりと診て行く予定です。そして赤ちゃんの成長も。

« 2013年9月 | トップページ | 2013年11月 »

2017年2月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        
無料ブログはココログ

iTune