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2013年11月

猫ちゃんの両腕骨折 -開放骨折、ALPS (アルプス) 使用-

連日の"今年一番の寒さ"更新ですね。

寒くなるのは当然のこととしまして、少しゆっくりと気温が下がってくれるとよいのですが、思うようにならないのが自然の常でしょうか。confident


その診察ははじめはお電話のお問い合わせからでした。
猫ちゃんがマンションのベランダから落下、外に飛び出したのではなく、ベランダにある小さな穴から数階下まで落下したようでした。

まずは近くの動物病院(1件目)へ行かれ、次にその動物病院では対応が困難ということで、骨折治療などで有名な動物病院(2件目)を紹介され、現在はそこに入院中とのことでした。手術が必要なことは明らかですが、いろいろな面でもう少し情報を必要とされていました。

当院にお電話をくださったのは、いわゆるセカンドオピニオンです。
入院中の2件目の動物病院の先生から、紹介というわけではないのですが、セカンドオピニオンであればと、うちの動物病院(3件目)の名前も挙げられたということでした。

飼い主さんがとても心配されていたのは、猫ちゃんの入院環境のこと、手術方法について、入院期間について、そして費用についてでした。

お電話でいろいろとご相談しまして、最終的には実際に診察をしないとわからないことがありましたので、そうお話しますと、すぐに転院して来られました。
2件目の動物病院の先生とはよいお付き合いをさせていただいておりますので、早速お電話でこの猫ちゃんの入院中の治療内容を伺って、転院手続きが完了しました。

あとはうちの動物病院で手術を行うことになりました。
飼い主さんは、普段動物病院では不安そうだったり、暴れてしまったりする猫ちゃんがうちだととても安心しているようだと、そこが一番うれしいことだと、そうお話くださいました。

入院はどのようなお部屋でするのかをご質問されましたので、入院室を見学していただき、手術の内容を含め、できる限りいろいろな質問にお答えし、そのほかにこちらからも必要なお話をさせていただきました。

猫ちゃんは両腕を骨折しています。
そして、骨折した後でも歩いておうちまで帰って来たとのことで、折れた骨が一度皮膚を突き抜けて飛び出していました。
これは開放骨折と呼ばれるもので、緊急に手術が必要ですし、ときに治らないことや、治るにも通常の解放ではない骨折と比べまして時間がかかることもあります。
それが両腕ともです。

このような腕の骨折にはプレートと呼ばれる金属製の薄い板を使って治療します。
プレートには大きく分けますと2つの種類があり、通常のプレートとロッキングプレートというものです。

違いの詳細はこの記事では控えますが、僕はロッキングプレートを好んで使っています。やはり治りが早い印象がありますし、世界的にも整形外科ではロッキングプレートが主流になってきています。

そしてロッキングプレートにもいくつかの種類がありまして、今回はALPS(アルプス)というものを使うことにしました。
スイスのKYON(キヨン)という会社の製品です。

このような落下で骨折まで起こった場合には、通常は肝臓など体の中にも何かしらの変化が起こっていることがあります。しかしながらこの猫ちゃんは体調的には落ち着いていましたから、すぐに手術を始めることができました。 
両腕の骨折手術には時間がかかります。
しかも今回は開放骨折。
慎重に、でもできるだけ早くに手技を進めていかなければなりません。

血管から点滴をはじめ、麻酔をかけて手術開始です。
看護師達も慣れていますし事前の打ち合わせもありますから、手術がはじまりますとほとんど言葉を使うところはなく、どんどん手術が進んでいきます。

片方の腕が終わり、次の腕も。
終わった報告を飼い主さんにしますと、早めにご面会に来られました。
猫ちゃんはその頃にはすっかりと麻酔からもさめていて、飼い主さんを心配させることはありませんでした。
少しの間入院しましたが、飼い主さんは毎日ご面会に来られ、元気で食欲も旺盛な猫ちゃんにすっかりと安心されているようでした。

骨折の手術で執刀医の胃を痛めることは、しっかりと治るかどうかがすぐにはわからないことです。
やるべき手術をきっちりとやり、あとは定期的に経過観察をしながら問題が起これば手を加える。これしかないところです。

やはり通常の骨折とは違いますから治りまでの時間はややかかりましたが、次第にしっかりとした骨ができてきまして、今ではテーブルからのジャンプもできるようになりました。

次の検診を一応最後にする予定です。
飼い主さんがとても心配そうなお顔だったのは初日くらいで、後は毎回来院されるときは笑顔だったのが印象的です。

アメリカ育ちの女の子

すっかりと寒くなりました。
そのような中、今度の9日(土)、10日(日)は院長不在です。
北海道の大学で行われます整形外科のセミナーに参加します。
不在中は世田谷区のひとつ動物病院の院長が診療を担当させていただきます。

北海道では10日の日曜日には雪との予報です。
寒いのは好きなので楽しみです。

今回のできごとは数か月さかのぼります。
数年前から、当院をかかりつけとしてご利用いただいているワンちゃんのお話です。

飼主さんがお出かけ中に、ワンちゃんをペットホテルにお預けになりました。
そのペットホテルからお電話をいただき、ワンちゃんの様子がおかしいとのことでした。

連れて来ていただくようにお話をし、来院した時にはすぐにでも手術が必要な状態でした。
これまでも当院で何度かの手術を乗り越えてくれた子です。
これまでと違うのは、14歳になっているという年齢的なこと。
しかし、手術をすれば助かるし、しなければ危険な状態になるだろうということは明白でしたので、手術をしない選択はありませんでした。

飼主さんはその時に遠くへいらっしゃって、連絡がなかなか取れませんでした。
ペットホテルの方もどうすればよいだろうかと悩んでいらっしゃいました。

飼主さんと僕とのお付き合いは長いので、どのような選択をされるかはある程度予想できていました。
それでも、いろいろとご説明申し上げないといけないことがありましたし、手術の承諾を得なければなりません。

その後どうにかお電話が通じ、お話をすることができました。
とてもとても心配されているのが痛いほどわかります。
おそらくはとても芯が強い方だと思いますが、遠方にいらっしゃって、しかも生命の危機があるとなると落ち着くことはできないだろうと思いました。

このワンちゃんはアメリカ育ちの女の子。
飼主さんと共に日本へ来ました。
とてもかわいらしい、小型のワンちゃんで、少し微笑んでしまうのは、このワンちゃんもしっかりと自分を持っていながら、普段はとてもおとなしく、いくらかキョトンとして見えることです。
でも、他のワンちゃんを見ると、途端に元気いっぱいモードに切り替わります。
(飼主さんに似ていると言っている訳ではありませんよcoldsweats01)

今はその子が危ない状態。
飼主さんの承諾を得てお戻りになられる前に手術をすることになりました。

この子を生きて飼主さんに会わさなければならない。
そんな使命感というものがありました。
飼主さんが遠方にいらっしゃるときにもしものことがあれば、飼主さんの後悔はいかばかりだろうか、そして僕自身も必ず後悔するだろうと考えました。

手術手技はいつものもの。
決して難しい手術ではありませんが、あとはワンちゃんの体力やお腹の中が現在どのようになっているかが、最終的にはお腹を開けるまでわからないことが心配事ではありました。

飼主さんのご家族の方々がお見えになり、いろいろとご説明した中で、手術へ突入。
慎重に慎重に手術を進めました。

幸いにもとてもよく麻酔からも覚めてくれましたが、やはり元気がないのはしばらくは続きました。

飼主さんとはあまり個人的なお話をしたことはなかったのですが、お母様から、このワンちゃんのことを伺う中で、飼主さんのこともいくつか聞かせていただきました。
異国の地でこのワンちゃんとどのように暮らしていらしたか、少しだけ垣間みることができました。

手術が終わり、飼主さんも戻られ、それでもしばらくは入院が続きました。
だんだんと元気になってくれて、そして退院の日を迎え。

どうぶつ達にはそれぞれにこれまで生きてきた証があり、その多くは飼主さんとの生活であり、純粋に飾る事なく向き合ってきた関係があり。

いつかは別れの日がくるわけですが、その日がくるまではできるだけよい想い出だけであって欲しいと思っています。

遠い国からやって来たこの子に限らず、どうぶつ達にとっては唯一の家族。
他に代わりがあるわけではありません。
そして多くの場合、人にとってもかけがいのない存在。

僕の場合、多くの方々のそのような関係を少しだけ見せていただける、そんな幸運に感謝しています。

手術からもうそろそろ半年が過ぎます。
ワンちゃんも穏やかに年を重ね、大切な飼主さんとできるだけ長く一緒にいられるといいなと、そう思っています。

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