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2014年10月

まだまだ元気だから -犬の鼻腔内腫瘍-

風が急に冷たくなりましたね。
今朝いつものパーカーを着て外に出ましたが寒かったですね。

ユニクロの厚手のかなり気に入っているパーカーで、先月アメリカに行く時にもしかしてあちらは寒いかもしれないと思って成田空港で買って以来かなりの頻度で着ているものですが、これだけでは冬は乗り切れそうにありませんね。
当然のことですが。
つい先日のことです。
お電話がありました。
犬のガムが奥歯にささって苦しそうにしているとのことでした。

早速来院してもらい、見てみますと、確かに左の奥歯にヒトの親指ほどのガムがかなりしっかりと食い込んでいてワンコも閉じることができない口に少し興奮気味でした。

一瞬で取り除けないかとガムをつかんで取ろうとしましたが、あまりにも深く食い込んでいいるのと、ワンコも興奮しているので、とても取ることができませんでした。

飼主さんにお話をして、ワンコには少しだけ鎮静薬で寝てもらい、その間に取りましょうと提案して取り除きました。
それでもやや粘稠性のある硬いガムは強く奥歯に食い込んでいまして、かなりの力が必要でした。

ガムが取れた後はワンコはすぐに目を覚まし、何事もなかったかのようにしていました。
ワンコはかなり前に来院したことがあったのですが、その後お引っ越しをされて近くにある違う動物病院に通われていたとのことでした。
ガムの件がある前から当院でいろいろとご相談したいことがあり、こちらへの来院を考えていらっしゃったときにたまたまガムが挟まってしまったとのことでした。

ガムの件の後、数日してから資料等をもって再度来院したいとのことでした。
そのときはどのような用件かがまだよくわかりませんでしたが、数日後の来院で詳しくお話くださいました。

近くにある違う動物病院での診察の話です。
いわゆるセカンドオピニオンを求められました。

長いこと時々鼻血がでるというご相談でした。
鼻血がでる度に薬を受け取り、よくなることもあるし、あまりよくならないこともあるしとのことでした。
あまりにも長く続いて鼻もスッキリとしないので、相談したいのだというお話でした。

一見すると外観はまったく問題がないように見えます。
しかし左の目がやや下向きです。
まぶたを広げてよく見ないとわかりませんし、さらに左右の目を同時に比べないととてもわかりにくいのですが、明らかにおかしな所見です。

口の中は前回のガムの件で調べていますから、今わかる異常は鼻からの出血と目のことです。
鼻から目にかけて大きな病気がある可能性があります。
悪い予想としては腫瘍です。

飼主さんにCTとMRIという画像診断をしましょうと提案しました。
これらは全身麻酔で行う検査ですが、かなり多くのことがわかる検査です。
費用も結構かかりますが、飼主さんは鼻血がでては薬ということにややお疲れのようでしたので、原因を追求しなければ繰り返すばかりでよくならないと、検査を希望されました。

結果はよくありません。
悪い予想のとおりで、鼻の奥からやや頭まで腫瘍が広がっていました。
そしてさらによくないことは、レントゲンではわからなかった肺への転移も見つかりました。
これは大変に小さい転移病変ですので、今再度レントゲン検査を行っても見つからないだろうと思いますが、今後わかるくらいに大きくなる可能性があります。

飼主さんはこのような結果ではありましたが、しっかりと受け止めていらっしゃって、手術はしない。できるだけ苦痛を取り除くことに集中したいとのお気持ちでした。

まだまだ元気です。
本当によく見ないとわからないくらいに、普通に見ただけではどこかわるいところがあるのかわからないくらいです。
前の動物病院での診察に問題があったか否かについてはコメントが難しいのですが、自戒という意味でも、確定診断を考えながら治療を進めないと、漫然とした対処療法だけでは手遅れになることもあるということでしょう。

動物病院でみる病気のほとんどは対処療法で治ります。
しかし時に対処療法では解決できない問題が起こります。

今回ワンコはまだまだ元気ですし、飼主さんも大変に前向きでいらっしゃって、楽しい生活はもっともっと続けられると思います。散歩もたくさんできると思います。
その中でゆっくりとお別れの心づもりもできると思います。

かなり悪くなってから病気の正体がわかり、このようにゆっくりとお別れまでの時間を過ごすことができない子もたくさんいることを考えると、どのような最後を迎えるのかという点ではこの子はよい方かも知れません。

飼主さんは結局何もできない僕に何度もありがとうと言われ、これからもお願いしますと言ってくださいました。
とにかく長く続いた鼻血の原因がわかったこと、まだまだ元気だから楽しい思い出はこれからも作れること、無理な治療以外にも選択肢を提示されたことがよかったのだとお話くださいました。

この子が幸せでいられたらそれでいいですから。
そのお話の後、この後に起こるかも知れない良いことと悪いことをわかる範囲でお話しして、その都度できる範囲で治療計画の再検討を重ねながら行っていきましょうということになりました。

いつかはお別れがきます。
避けられないお別れであるならば、どのようにそのときを迎えるか。
獣医師として動物達に永遠の命を提供することはできません。

しかし、この病気はこのように進む、あるいは治る、またはうまくつきあうべきものですなどと言った見通しをお話しし、ともに進むことはできると思います。
最後のときまで何かしらのお力になれればと思っています。

お母さんが元気になりましたよ! -犬の脾臓摘出-

寒い雨の日になると聞いていましたが、結構動き回っているせいか、暑いくらいに感じます。当然ながら雨降りではありますがrain

それは19日(日)のことでした。
午後の診察のときに、目やにが気になるという小型のワンコがお母さんと来院しました。
見るとワンコはペロッ、ペロッと自分の口の周りを毛を舐めています。
あれっ?瞬間的に何か違和感がありました。
じっくりと見てみないとよくわかりませんでしたので、唇をそっとめくって見てみました。
やっぱりかなり舌が白くなっています。
お母さんはいつものように、とてもお元気で笑顔で会話されています。
しかし僕の表情の変化にお気付きになって、はじめて笑顔ではなくなりました。
どうかしましたか?
確かにそうです。
目やにの診察で来院されているのに、目よりも口の中を見ているわけですから。

かなりの貧血がありそうです。
そう言いながら、いくつか検査をしましょう。
多くをお任せいただくことが多いので、そのまま検査をすることになりました。

僕は最近になって、かなり直感を大切にするようになりました。
はじめの「あれっ?」をかなり大切にしています。
これまではあれっ?と思って検査をしても空振りに終わる、いわゆる杞憂に終わることも体験しましたが、結局のところ、その違和感は最終的には切り捨ててはいけなかったというのが結論になっています。

舌が白く見えるもそうです。
これまで何度もそう見えて、でも調べると問題がないという体験があります。
それでも無視するには目立った白さでした。

血液検査を行い、レントゲン検査、お腹の超音波検査(エコー)を行いました。
大変に厳しい貧血があることと、とても大きな脾臓があることがわかりました。
体重が2kgほどしかない小型のワンコのお腹はほぼ大きくなった脾臓でいっぱいでした。

お母さんに検査結果をお伝えし、できれば早くに脾臓を取り除く手術をしましょうと提案しました。 

うちで手術ができるのは早くても2日後の21日(火)です。

目やにの診察で来院されたのに、命に係る大きな問題が見つかりました。
お母さんのお顔の方が蒼白になるのではないかと心配しました。

はっきりと言えることは、とても重い貧血があることと、とても大きな脾臓があり、リスク覚悟で脾臓を取り除かなければならないということです。
脾臓は腫瘍かも知れませんし、違うかもしれません。
いずれにしても、大きすぎて他の臓器をかなり圧迫していますから残して治すという選択はありません。

手術の選択を決断され、予定どおりに21日(火)に手術をすることにしました。
脾臓を取り除く手術です。

輸血の準備もできていますので、必要ならすぐに輸血ができる状態で手術開始です。
8歳、女の子、普通でも輸血が必要なくらいの貧血、そしてお腹いっぱいに大きくなった脾臓、さらには体重はわずかに2kg。

お嬢様が海外の大学に留学中で、生死に係ることを知らせるべきか迷っていらっしゃいました。
普段ならば是非お知らせされた方がよいと思いますとお声をかけますが、今回は何も言えませんでした。
手術直前にワンコをお預かりするときに、お嬢様にご連絡をされ、写真も添付して送られたとのことでしたので、手術後に元気な顔を送ってもらえるようにという想いで手術にのぞみました。

脾臓を摘出することは外科手術としては難しい手術ではありません。
しかし今回は糸の端が触れただけでジワーッと出血が始まります。
それにしてもとても大きな脾臓でした。
普段の切開ではお腹からだすことができず、切開を広げながらどうにか脾臓をだすことができました。
ここからは血管を一つずつ処理しながら脾臓を取り出して行きます。

かなりの貧血ですから、輸血の準備があるとは言え、できれるだけ出血を最小限にする必要があります。
慎重に慎重に手術をすすめました。
結果的には本当にわずかな出血で終わることができ、脾臓も無事に摘出ができました。

少し多きかったお腹も小さくなり、元の小型のワンコに戻りました。
夕方の手術直後にご面会に来られました。
朝は小さな声だったお母さんも、いつもの元気な声になってらっしゃいました。
何よりこの小さなワンコはあれだけ大きな変化があったにも係らずに、すごく食欲があります。

まずは取り除いた脾臓の病理検査をまちますが、このままよくなってくれるように薬を使った治療をすすめています。

今日は術後1日目ですが、今日もワンコがとても元気なので、お母さんも本当に笑顔になって頂くことができました。
病気がわかってからよく眠れなくて、でも昨日は久しぶりにぐっすりと眠れましたとお話をしてくださいました。

これから治療が続きますが、このまま無事に退院できますようにできるだけのことをするつもりです。

次の日曜日(10月19日)は

台風が去って、きれいに晴れましたね。
秋晴れの青空がとても気持ちのよい朝になりました。

お知らせがあります。
10月19日(日)は通常どおりの診療日ですが、午前の診察時間に園田が不在です。 

代わりの獣医師が診療を担当いたします。
午後の診療開始までには戻る予定です。


犬猫の診療という仕事 -2-

まだ獣医師 として仕事をはじめたばかりの頃のことです。
勤めていた動物病院に出入りされていた業者さんに言われたことがとても印象深かったのを覚えています。
その業者さんは白衣などのクリーニングをお願いしているところの配達係の方でした。毎週きれいに糊付された白衣を届けてくださっていました。
僕よりも5つ以上は年上の女性でした。

毎週の配達ですので、何回も挨拶をしたり、少しだけ会話をしたりという機会がありました。
ある日のことです。
少し怪訝そうな顔で言われたのは、「動物が何を話しているかわかるのですか?」ということでした。

おそらく深い意味はなく、純粋に言葉のとおりの質問のようでした。
動物病院という仕事に対する、あるいは獣医師というものに対する素朴な疑問だったと思います。

まだ獣医師としての仕事をはじめて間もないところでしたが、このような思いの方がいらっしゃることは新鮮な驚きでした。
当然ながら、この方はどうぶつを飼ってはいらっしゃらなかったはずです。

言葉が通じないどうぶつをどのように診察するのか?
どこが痛いとか、どのように具合が悪いかとかをどのように診るのか?
もしかしたら人間側の勝手な思い込みで診療と称して医療行為のようなことをやっているのではいだろうか?
そのような気持ちも伺える表情もありました。

もしかしたら、このあたりはまだ言葉を話さないヒトの赤ちゃんの診療と似ているところがあるのかも知れません。

僕の場合は客観的な証拠というものを積み上げていく作業を行います。
足を引きずるワンコを連れて来られたとします。

痛そうに「見えます」。
しかしまずやるべきことは、まずは痛いのか痛くないのかを知ることです。
見て、触ってからです。
指の関節から1本1本触って、伸ばしたときと曲げたとき、そして少しだけひねったときの様子をみます。
おかしいな、もしかしたら痛いのかな?と思ったら逆側もみます。

逆側は触られても何ともないのに、引きずっている方はまるで「やめてっ!」と言ってるかのように足を引っ込めるような仕草をする場合には、このあたりが痛いのかもしれないと仮に判断しておきます。

次にレントゲンなどを使って検査をします。
異常がはっきりとわからない程度のこともあります。
そのときには引きずる程度によっては痛み止めを使うこともあります。
痛み止めを使ってみてから引きずることがなくなれば結果として痛かったのだろうということがわかることもあります。

このようなときに考えられるのは次のようなことです。
1.足の裏の皮膚の炎症が強くて地面につくと痛い
2.指、関節、などの骨の痛みがある(一時的なねんざなど)
3.膝の関節が脱臼している
4.股関節が脱臼している
5.膝の靭帯が痛んでいる
6.腰の神経に痛みがある
7.後ろ足に大きな毛玉があって歩く時に違和感が強い
8.足の裏に何かが刺さっている(釣り針や小さなトゲやガラス片など)
9.骨折がある
10.爪が折れていたり、傷ついている
などなど
このようなことから可能性あり、可能性なしと分けながら絞り込んでいきます。

言葉が話せなくても、しっかりと診断にたどり着けます。
ひとつひとつをお話しながら解決へ向かって行く作業は、ときに飼主さまの不安を徐々にではありますが、取り除くことにつながります。
もちろんワンコの症状が改善すればそれが一番の安心になることは間違いがないことです。

言葉が話せるとかなり早くに診断ができそうですが、この地道な作業もとても大切なことです。
客観的な証拠を少ずつ積み上げながら。

もう10年以上も前のことなのに。
ときどきなぜか思い出す。
そのくらいに印象深い言葉でした。

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