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子だくさんのお母さん -クッシング症候群-

もう少しすると暖かい日がくるという予報がとても嬉しくなりました。
それにしても寒いですね。

数年前のことです。
まだ開院して間もない頃でした。
お腹に赤ちゃんがいるお母さんワンコを預かることになりました。
出産介助をご希望でした。

5月の連休中で休診日のために人手が少なく、また確かな予定日が確定していなかったために連日ワンコの体温を測定していました。
出産前に下がる体温まで下がったので泊まり込んでの出産介助でした。
夜中で僕一人だけしかおりませんでしたので、緊急の帝王切開になった場合には看護師にコールすると伝えてありました。

夜中から破水に続き出産がはじまりました。
生まれては体を拭いたり温めたり、呼吸を確認したり。
明け方までかかりましたが、無事に5匹の赤ちゃんが生まれました。

とてもよくお母さんをしてくれて、子供達もお母さんを頼りにして。
飼主さんも大変に頑張って、そして楽しみながら見守っていらっしゃいました。

数年の後、そのお母さんがある日から水をたくさん飲むようになりました。
トイレに行く回数も増えてきました。
典型的なクッシング症候群の症状がみれら、検査をすると明らかな陽性でした。

子供達とは一緒に暮らしていますが、もうみんな立派な成犬になっています。
お母さんは疲れたみたいに、元気がない日も多くなって行きました。
クッシング症候群の治療はお薬を飲むことで行います。
お薬を飲み、ある程度の期間毎に特別な検査をします。
ACTH刺激試験という検査です。

臨床獣医師の中では、治療方法は知らない人はいないと思います。
どの獣医師もある程度の治療経験があるはずです。
そして突然に亡くなってしまうことが多いということも治療経験がある先生ならば知っていることです。

ある大学の先生とお話をしていたとき、クッシング症候群の治療は必要かということが話題になりました。
正直難しい質問だと言われたのを覚えています。
では何のために治療をするのか。

治療を急ぐことでよいことがあるのか、あるいはないのか。
まずは診断をしっかりとすること。
いくつかの検査を組み合わせる必要があり、慎重に行うことが大切で、むやみに薬をはじめるべきではないと考えています。

このお母さんワンコは数年の治療経過の後で、突然のお別れをしなければならなくなりました。
それまではお薬の効果も高く、検査の結果もとても安定していました。
治療が非常にうまく行えていたという実感があります。
それもかなりの長い間。

出会いからの年月を考えると、とても印象深い子でしたし、飼主さんの思いにできる限りお答えしたく、懸命に治療をした結果でした。
その後、飼主さんは子供達みんなの健康診断を希望され、今みんな元気に過ごしています。

しかしながら、お母さんワンコがいなくなったことは本当に悲しいできごとでした。
このことがあってから、治療を急ぐことよりも優先すべきは確定診断で、もし確定した場合、治療開始は慎重に飼主さんとお話をするようになりました。

お薬を飲むとすぐにいろいろな症状が改善し、このままずっと一緒にいられるような、そんな気持ちになります。
しかし、それは表面上の取り繕いかも知れません。
しっかりと今後を見据えて、期待と覚悟でつき合わなければならないこともあります。

水を飲む量が減った。トイレに行く回数が減った。
それだけであとは定期検査を繰り返すだけだと、十分ではないと考えています。

どの子も思入れがあるからこそ簡単な教科書とおりのことだけでいけないと思っています。

臨床獣医師としての少ないながらも内容の濃い体験はどうにか活かしていきたいと思っています。

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