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2015年11月

再開とお別れ - 犬の肝臓がん -

いつもより少しだけゆっくりできそうな休日になりました。


3週間ほど前のことです。
およそ6年ぶりにお会いしたワンコはすでに自分では立つことができない状態でした。

とても優しいおばあちゃんに飼われているそのワンコは、かつてほとんど毎月のように通院をされていました。
「せんせいのところへ行こうね」というと喜ぶんです。
毎回そのようにお話をしてくださっていました。

治療していた病気が落ち着いて来たこともあり、来院がなくなりました。
それを最後にして再開したのはそれから6年ほど経った3週間前のことです。

おばあちゃんはこれまでのことをたくさんお話しくださいました。
ご自身のご病気のために、当院までの移動手段をお持ちでないなかで通院ができなかたこと。
息子さんにワンコのことをいろいろとお任せされていたこと。
ご自宅近くの動物病院であったできごと。
などなど。

おばあちゃんもすっかりとお疲れの様子でした。
一目見て、そのワンコがかなり厳しい状態であることは、おそらく獣医師である僕だけではなく、誰の目からも明らかだったと思います。

まずは何が起こっているか診てみましょう。
血液の検査、レントゲン検査、お腹のエコー検査。
そこでの診断は末期の肝臓の癌ということでした。

おばあちゃんにゆっくりとご説明しました。
よくない話になるだろうと覚悟されていたように見えました。
肝臓の癌ということは想像されてはいませんでした。

この状態で手術はできません。
体力の回復も難しいと思いました。
率直にわかったことと、思うことをお話ししました。
頑張っても1週間くらいだろうと、とても再開のお話ではなくなっていました。

食事をとることができなくなっていましたので、点滴をしたり、どうにか何か食べて欲しかったので、食事を用意したり。
できることは限られていましたが、考えられることを全て提案し、ご希望のものを進めることにしました。

それから2回来院されました。
その2回目の来院が最後になりました。

お電話で最後の様子を教えてくださいました。
せっかく6年ぶりに再開できたにも関わらず、僕の力及ばず、お別れしなければならなくなりました。

そして昨日のことです。
おばあちゃんがご挨拶に来てくださいました。
笑顔でした。

実はあまりよくないことはわかっていました。
そのようにお話をされました。
動物病院を怖がる子はいるでしょ?
でも、うちの子はここが大好きだったんです。
私が病気をしてから、ここまでの足がないものだから連れて来られなくなって。
病気だと思っていたけど、私も息子もあの子は長生きなのだからって、いろいろと治療のことだけを考えていた訳ではなかったんですよ。
肝臓の癌だとわかって、元気がない原因がわかって。
やっぱり仕方がないんだって。
こちらにまた伺おうと思ったのは、だんだんと元気がなくなるこの子の最後に何か喜ぶことしてあげたいなって。
そう思ったときに、大好きだった動物病院に連れて行ってあげようって。
あの子、喜んでました。

獣医師としては元気にすることができなかったことは敗北です。
人として6年の時を経て思い出していただけたこと。
そして何かしらのお役に立てたかも知れないことは、逆に僕の方が慰められました。

きれいなお花に囲まれた最後の写真を見せていただきました。
それを微笑みながら見せてくださったおばあちゃんの、穏やかな表情が印象的です。

お父さんの分身

少し前まではこの時期にマフラーをしている人はとても寒がりさんなのかなと思うことがありましたが、最近では僕自身もマフラーが欲しい朝があります。

小さなワンコのお話です。
初めてその小型のワンコに会ったのは、他の動物病院で骨折を治す手術を受けた後でした。
手術は受けたけれどもうまく歩けない。
痛そうにしている。そのようなときでした。

もう8年も前のことです。
それからいろいろとご相談を受けたり、治療や検査に来られる機会がありました。

その後に右腕の様子がおかしくなり、ときどき引きずったり上げたりするようになりました。
いろいろと検査をしましたが、腕にできたできもののさらに詳細な検査のためにCTを撮りましょうというところまでお話をしました。
当院にはCTがありませんので、CT検査ができる動物検診センターをご紹介しなければならないのですが、そのお話の前に飼主さんはお友達から聞いたということで、CT検査ができる動物病院を受診されました。

CTは全身麻酔で行います。
他の動物病院で全身麻酔をかけて検査をしたらそのまま腕にできたできものの手術になったようです。
悪性腫瘍だということで、かなり大きな切り口で手術がなされたようで、飼主さんはその傷口をみてとても心を傷めていらっしゃいました。

他の動物病院に行かれたのも、手術を受けることになったこともお父さんのご判断だったようで、ワンコに悪いことをしてしまったと後悔のお話をたくさん聞かせていただきました。
その時に聞いたことですが、はじめの骨折もお父さんがうっかりして起こされたできごとのようで、その後当院に来られるたびに、ごめんね、ごめんねと話しかけていらっしゃいました。

それから間もなく、血液の病気がわかりました。
輸血が必要なほどの異常がみつかったのです。
ちょうど輸血の準備ができない日で、東大にお願いすることになりました。

東大は通常の場合は、明日お願いしますと言って受け入れてくれることはありません。
とても外来数の多い大学病院ですが、血液内科の先生とお話をしたばかりでしたので、快く受け入れてもらうことができました。

治療に対する反応も良く、とてもよく回復して来た矢先に、今度は脾臓にできものが発見されました。

僕もいろいろなワンコを診ますが、こう立て続けに外科手術が必要になったり、輸血が必要になるような病気になったりする子はあまり見ません。
お家の方々のお気持ちがいかばかりか、容易には拝察しかねますが、懸命に応えたいところです。

東大からのお話ですと、脾臓のできものはいつ破裂するかわからず、そうなったら手遅れになることもあると言われたようです。

手術は東大でもうちでもできますが、東大ですとご自宅からやや離れていますので、ご面会のことを考えますと近くの方がよいということになりました。

普段はいろいろな良い想定も悪い想定もお話をするのですが、今回はこちらがとにかく引き受ける覚悟で、気軽なお話でお預かりをいたしました。
お父さんも笑顔で預けてくださいました。

いつ破裂するかもしれない脾臓を摘出するわけですから、危険がないはずはないのですが、とにかく慎重に進めれば問題はないはずです。

結果、麻酔も手術もその後もこちらの心配をよそに、とても元気なまま経過しました。
お父さんが、この子は僕の分身だから。
そう言ってお迎えに来られました。
とても強い絆で結ばれている。そんな場面でした。

そして心配していた脾臓の病理検査の結果は、摘出して完治が目指せるとうもの。
想定されたなかでは最もよい結果となりました。

数日後に東大の検診があるようです。
よい結果を担当の先生にご報告できるはずです。
もっともっと一緒にいられそうですよ。

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