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寄り添うウサギ - ウサギの乳管炎 -

昨日は用事があって新潟にいました。
吹雪で視界が限定される程でしたが、きっちりと用事を済ませることができました。
日帰りで東京に帰って来ましたが、寒いはずの東京の冬の風が、新潟帰りの僕には少し春めいて感じましたよ。
もう2月ですし、確かに春は近づいているはずです。

当院には外国から来られて東京に住んでいらっしゃる方々も多く来院されます。
近くは中国、韓国、あとはタイ、アメリカ、イギリス、フランス、チリ、ドイツ、などなど。
日本語がとっても上手な方から、全く日本語を話されない方まで様々です。

今回、ウサギを連れて来られたのも外国から東京へ来られた方です。
どなたかご家族があるのかと思っていましたが、いろいろなお話でお一人でお住まいだと伺いました。
相棒のウサギさんと一緒に。

このウサギさんの胸に大きなできものができていました。
ウサギさんはどういう訳か体のいろいろなところに膿瘍と呼ばれるチーズのようなものが入ったできものをよく作ります。
病気ですので治療が必要ですが、ほとんどは、薬では治りません。
手術が必要です。

しかし、できる場所によっては手術でも治りません。
結果、治すことができないものとなります。

飼主さんはとても流暢な日本語で、いろいろと質問をされました。
ある程度お話ができた段階で、手術を決断されました。

僕も治すことができる、すなわち、手術でしっかりと解決できるのか、できないのかをお伝えする必要がありました。
触診で時間をかけて判断しました。
せっかく手術をしても、完全に治すことができないとなると、そもそも手術以外の選択がないとしても辛いものです。
今回は完治可能と判断しました。

ウサギさんの麻酔は、犬や猫とは異なります。
強くはないどうぶつですので、優しく優しく取り扱います。
今回はできものを取り除きますが、体の割には結構大きいものですので、手術時間がある程度は必要で、そのためにウサギさんの体力的にも負担がかかりそうでした。

慎重に麻酔はじめました。
ウサギさんは興奮を始めると、そのまま一気に急性循環障害で命に関わる転帰をたどることもあります。
そうなると途中でこちら側でできることはほとんどありません。
緊張などでドキドキする心臓をすばやく平常にもどすことができないように。
おそらくは自分のことであっても、コントロールができないものです。

こうならないように、慎重に麻酔を始めます。
そっとそっと優しく取り扱いながら、麻酔がきいたところで手術準備として剃毛や消毒を行います。

手術で切開するところを慎重に選びながら、通常のメスと電気メスを使いながらゆっくりと皮膚切開を行いました。

できものは乳腺に連続していて、乳腺組織もできものと一緒に取り除きます。
止血、血管の結紮、切断を繰り返しながら、できものを少しずつ体からはがしとりました。

僕はただただ手術を進めるだけで済むのは、麻酔管理を行ってくれる看護士が優秀だからです。
この手術に限りませんが、ほとんどの手術で僕が麻酔係の看護士に指示をすることはほぼありません。あっても手術全体をとおして1回か2回くらいで、細かな指示を続けるようなことはありません。
そして幸いなことに、僕の執刀する手術で麻酔で命に関わったという経験もありません。
スタッフに恵まれているといつも感謝しています。

できものは無事に取り除くことができ、日帰り予定だったウサギさんも飼主さんのものとへと夕方には帰っていきました。

病理診断は慢性化膿性乳管炎。
当院に来られた時にはかなり大きかったのですが、手術の決断は早くにしていただけましたので、それがまだ幸いでした。
また、この病気は完治しますから、これからも治療続ける必要はありません。

異国から東京へ。
そしてお一人でお住まいです。
かってな想像ばかりでは失礼かとも思いますが、毎日のお仕事が終わられ、お家に帰られますと、このウサギさんが出迎えてくれるはずです。

僕は勉強で海外に行くことはありますが、1週間程でも心細い思いをするこや不便を感じることがあります。
それが異国に住むとなるとまたどれだけ大変か。
そのような中でのウサギさんの力は大きいものだと思います。

これからも飼主さんに寄り添って。
かわいがってもらって欲しい。
そんな思いでした。

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