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一流の仕事

寒さが和らいできましたね。
今日は休診日でしたので、久しぶりにゆっくりと朝食をとりました。
隅田川のテラスでぼ〜っとしながらcoldsweats01
川面に映る朝日まぶしくて、直接の日光も暑いくらいでした。

昨年から読み込んでいる本があります。
肝臓外科の本です。
動物用にはこのような良書はありませんので、ヒトの肝臓外科の本です。
2冊の本を読んでいました。

肝臓外科とは、肝臓にできた癌を取り除くための手術を行うのがほとんどです。

そしてこの肝臓の外科は他の手術と比べてとても特殊です。
僕の印象は、肝臓を血液をたっぷりと含んだスポンジだとすると、その血液を1滴も漏らずに、スポンジを半分に切る。そんな感じです。
何だか手品みたいですが、あくまで印象です。

通常は肝臓に網の目のように走る細かな血管や大きな血管、そして胆管というものを電気や超音波といったものを使ってシールします。
しかし、この本には、当然ながらそのシールする方法もありながら、それとは別にひたすら糸を使って手で血管を縛る方法で肝臓外科の手術数で日本一を誇るドクターによる記載がありました。

概要としては、まず肝臓を小さくつぶします。
鉗子というもので行います。
肝臓の細胞はとてももろいので、つぶれてしまいますが、血管は肝臓の細胞よりは丈夫なので残ります。
その残った血管を糸で縛ります。
そこを切断。
ひたすたひたすらこの繰り返しです。
小さくつぶして血管などを露出して糸でくくって切る。
また小さくつぶして...。
そしてこの血管はおおよそ糸ほどの太さしかありません。
中には、糸よりも細い血管もあります。
1回の手術で結ぶ糸は200から300ほどということでした。
近道はしない。
あえて遠回りをして必ずよい結果を残す。

この、肝臓はつぶれますが、血管は残る微妙な力加減に適した鉗子も特別に存在しました。
この日本一の肝臓外科医、世界的な肝臓外科の権威でいらっしゃるドクターの名前のついた鉗子です。

その先生は外科の教授で大学の医学部長です。
この鉗子を使わせてもらいたいと思いました。

この鉗子は先生の特注品です。
まずは鉗子を作っている会社へ連絡をしました。
幸いに、その会社は当院から近いところにあり、当院の横の道をよく通られるということで、社長さん自らいくつかの鉗子を持って来ていただきました。
ちょうどね、先生の鉗子を預かって来ているんですよ。
と、実際にご本人が使われている鉗子を見せて頂きました。
これは実際に使われている物。

欲しい旨お伝えしますと、快諾していただき、購入できることになりました。
獣医さんには初めて売りますよ。そう言われながら大きな声で笑っていらっしゃいました。
とてもお話ししやすい社長さんです。

あとは、本で知る方法しかありませんので、読み込んでいた訳ですが、鉗子を使っているところを見てみたい。そう思いまして、社長さんに先生の手術ビデオなど見せてもらえないでしょうか?もしかして、手術の見学とか。などどと聞いてみました。

社長さんはまたも豪快に笑いながら、お名刺ありましたら渡しておきましょう。
そい言って、先生へと秘書さんへ僕の名刺を渡していただけることになりました。
それから2-3日後に電話がありまして、手術の見学、いいそうですよ。
そうお返事をいただきました。

大学病院へは母親の入院のときに行ったくらいで、患者の家族としてのみでしたが、手術見学に行けるとは信じられませんでした。

獣医師仲間から聞いた話ですが、大学の動物病院へ手術見学に行こうと思っても、なかなか難しいよ。ということでした。
手術見学だけという、いわゆる都合の良いことはさせてもらえないようでした。

それが、人の肝臓手術で世界的権威、さらに日本一の手術数を誇るドクター。
何と懐が広いのでしょうか。
秘書さんもとても親切で、ご多忙な中、いろいろと予定調整をしていただきました。

大学病院の先生方の朝はとても早くて、朝のカンファレンスが7時30分からはじまります。そこから参加させていただいました。
8時30分からは外科と内科のカンファレンス。
回診の後で手術です。

僕は獣医師ですので、どこまで近いところで見せてもらえるかと思っていましたが、ドクター達のとても早い手術操作の中にありながら、とても細かな説明をしていただきながらの見学でした。

一流に仕事。
それを目の当たりにしました。
それは細やかで繊細な手術における手先だけのことではなく、まぎれもなく患者さんへの思い、気持ちや倫理観や使命感や責任感、思いやりといった、外科医の手や体を動かすための原動力でした。
そしてそれは関わった外科医の先生方、手術室の看護師さん全てにおいて一流でした。

手術手技を見せてもらいに行きましたが、学んだことは期待の枠を大きくはみ出し、当初の期待の何倍もの体験になりました。
僕の獣医師人生において、これを超える体験はいれまでもこれからもないであろうと考えています。

関わってくださったドクター達はみなさんともても親切で温かく、それまで考えていたお医者様の印象がかなり変わりました。
このようなドクターに手術をしていただけることは、何にも代え難い貴重なことだと思います。

またおいで。
そう言っていただきました。
また懸命に前に進んでから、伺おうと思っております。
この機会を作っていただいた多くの方々に感謝してもしきれない、そのような思いです。

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