こんな病気

犬の子宮蓄膿症

晴れましたね。
隅田川の流れと佃の方に広がる青空がきれいな朝でした。

ちょうど1週間前です。
小型のワンちゃんが来院しました。
かわいい女の子です。
食欲はあるのですが、陰部から膿のようなものが出ています。

普通はこの段階で子宮蓄膿症と診断するのですが、今回は様子がいつもと違いました。
外陰部の中の方に何かできています。
硬いできものです。
そしてお腹の中を超音波(エコー)で見てみますと、子宮の壁もかなり厚みをもっています。

腫瘍だろうと考えまして、いろいろと検査をしました。
結果は子宮蓄膿症と膣の腫瘍。
統計的にここの腫瘍は80%ほどが良性と考えられます。

手術を行うことになりました。

飼い主さんには小さなワンちゃんがこれから受ける手術について、できるだけ詳しくお話をしました。
ふと見ますと、飼い主さんのお持ちのバッグに「お腹に赤ちゃんがいます」のマタニティーマークが見えます。
まだそのマークを見ないとわからない感じでしたが、そう遠くないところで、新しい家族が増えるのだとわかりましたconfident


腫瘍の方は陰部切開という切開を行ってから、尿道にカテーテルを通して尿道に傷をつけないようにして切除をしました。粘膜の壁に癒着を起こしていましたから、電気メスで止血しながら切除を行いました。
ここは結構出血することもあるのですが、幸いなことに目立った出血もなく切り取ることができました。

縫合が終わると次には卵巣と子宮を摘出するために開腹手術に移りました。
切開を行い、皮下組織を分離し、お腹まで切開を進めます。
かなり膿が充満して大きく膨らんだ子宮が出てきました。
どうにか破けてはいなそうです。
慎重に腹水などを観察しましたが、濁ってはいませんでした。
このような手術は基本的な術式が決まっていますから、特別に変わったことはしませんが、卵巣の取り扱いだけは慎重に行いながら無事に全てを取り除くことができました。

この子には乳腺腫瘍もありましたから、3つの手術を同時に行うことになりました。

無事に終わりましたが、思うのは、この子が無事であることと、飼い主さんは妊婦さんですので、精神的な負担は良くないだろうということですね。
今回の手術はもしものことがありえた訳ですから、とにかく慎重に進めました。

無事に退院を迎え、飼い主さんもワンちゃんも喜んで帰って行く姿を見て、初めてホッとすることができました。

嬉しいというものではありませんね。
一つ責任を果たせたのではないかという安堵でしょうか。

この仕事はその繰り返しだと思います。
また一つ、そしてまた一つ。
果たさなければならない責任があります。

それが皆さんの安心になれば、と願いながら。

猫さんが食べたもの

今日も一段と寒いですね。

雪でも降ってきそうですsnow


食欲と元気がなくなったネコさんが来院しました。
これまでもよく診せていただいていた猫さんです。
お家の方も、特別に心当たりがないということでしたが、いつもはよく食べる猫さんがほとんど食べません。

吐き気もありましたので、いくつか検査をしますと、お腹の中に何かあることがわかりました。
できものなのか、異物なのか。

しかしレントゲンでははっきりと写ってきません。
飼主さんは、食べ物以外は食べないと思います。ということでした。

腫瘍か異物かは開腹手術をしなければはっきりとしたことはわかりそうにありませんでしたが、いずれにしても開腹手術が必要だと考えていました。

飼主さんは手術を避ける方法はないだろうかとご相談されました。
もっと詳しく調べる物としてCT検査がありますよとご提案しました。
CT検査はかなり多くの情報を短時間に知ることのできるものですが、動物の場合には、基本的には鎮静や麻酔といった、どうぶつ達が検査中に動かないでいてもらう処置が必要です。

以前に、鎮静も麻酔もしないでタオル等でグルグル巻にして検査したという話を聞いたことがあります。何だかかわいそうな気がしましたが。

検査センターでCT検査を行うには、飼主さんにセンターまで猫さんを連れて行ってもらわなければなりませんが、今回は海外出張に出かけられるとのことで、うちの動物病院からスタッフが連れて行くことになりました。

そして検査でわかった物は...。
何かのキャップのようなものでした。

異物だったのです。
CT検査の結果を3D画像に加工して、海外にいらっしゃる飼主さんにメールでお送りしました。
腫瘍やその他のものではないことがわかり、手術で完全に治ることがわかりました。

飼主さんは、でも、これは何でしょうね?
と、依然異物にはお心当たりがなさそうでした。

まず、やることが決まりましたから、すぐに手術です。
手術で取り除くべき物も、それが腸のどこにあるかもわかっていましたら、迅速な手術ができました。
メスを入れる前には、ほぼ完全な計画が出来上がっていますから、僕も看護師もほぼ無言で淡々と手術は進んでいきます。

飼主さんはその後一時的にご帰国され、手術が終わった猫さんと、猫さんのお腹から出て来たキャップをご覧になりました。
あーー、この子がよく遊んでいる物の一部です。
実物をご覧になり、やっと何かがおわかりになられたようでした。

猫さんはしばらく入院でしたが、その間、飼主さんはまた海外へ。
真冬に寒い国へのお仕事のようでした。
帰国に合わせて退院でした。

猫さんは何でも良く食べる、いくらか多食らいの子になっていました。
飼主さんも安心され、笑顔で連れて帰られました。

お仕事中はメールでしかやり取りができませんでしたが、猫さんが具合を悪くした原因も、治療法も、そして予後もわかっていましたから、飼主さんの心配は比較的少なめだったと思います。

そして元気に抜糸に連れて来ていただき、そのときの体重も増えていてhappy01
しばらく思うように食べられませんでしたから、たくさん食べて少しばかりマルマルとなって欲しいものですconfident

難しい病気 - フェノバルビタール反応性唾液腺症 -

お知らせがあります。
明日の1月30日(土)の午後の診療は園田に代わりまして、岸田獣医師が担当させていただきます。
<1月30日土曜日>
午前 9時から12時  担当 園田
午後 5時から8時  担当 岸田
翌、日曜日には園田が終日診療をいたします。
よろしくお願いいたします。

去年の末に小型の可愛らしいワンコが来院しました。
もう何年も前からのお付き合いがある方からのご紹介でした。

吐いたり、食欲にムラがあったりが続き、
近くの動物病院でいろいろな検査を受けたということでした。

バリウムを飲んだり、血液の検査、レントゲンの検査、などなど。
それでもよくならないということで、ご紹介されたということでした。

飼い主さんはとても明るい方で、ワンコも同様に大変に可愛らしい子でした。
ワンコはいろいろな辛い症状があるはずでしたが、くりっとした大きな目でいつもキョトンとしています。

僕もまずは基本的な検査を行いました。
考えられることと、主な症状から、治療を開始しました。
しかしながら、なかなか思うような良い反応が見られません。
そうしているうちに、すぐに年末となりました。

年末年始は少しばかり東京を離れらえれるとのこと。

そこでお電話を頂戴いたしました。
年末年始を使って、お出かけされている先からでした。
吐き気がなかなか治らないので、近くの動物病院を受診したいということでした。

年始に東京に戻られて、再開したワンコは...。
下顎が大きく腫れていました。
お話を伺いますと、お出かけ先の動物病院で麻酔をかけて口の中を詳しく検査をされたとのこと。
その頃くらいから腫れてきたということでした。

下顎の腫れこと、嘔吐のこと、食欲にムラがあること、唾液が多く出ることでグフグフといつも口の中に違和感を感じていそうなこと、一時的に呼吸が苦しそうになり、舌の色が変わること。
これらの症状が一つの病気からなのか、幾つかの病気の組み合わせなのか。

普通は一つの病気から起こる一連の症状のはずです。

下顎から首にかけての腫れ、呼吸のこと、嘔吐のことを調べるために、CT検査を行いました。結果はわずかな異常が数箇所に見つかりましたが、今回の病気を特定するようなものではありませんでした。

幸いにもワンコは食欲にムラがありますが、食べる時には本当によく食べてくれます。
大きなドライフードもカリッ、カリッと食べる姿はとてもかわいいものです。
そのような中で、食べなくなってしまったと連れて来られました。

点滴を行ったり、症状の観察を行う目的で数日の間入院してもらうことになりました。
飼い主さんはCT検査にしても、入院にしても、とてもよく理解していただき、なかなか治療に反応がない中でも、すべてをお任せしていただきました。

その3日間の入院中の様子から、いろいろと考えることがありました。
初日、いくらか強く効く吐き気止めを注射しましたが、それでも吐きます。
食べるようになってくれて、ドライフードをいつものようにカリカリと食べますが、しばらくするとげーっとなります。

この薬が効かないとなると...、もしかするとCTでは捉えきれないような異物が胃の中にあって、それが問題を起こしているにではないだろうか。
そうすると、下顎から首にかけての大きな腫れはどう見ても唾液腺嚢腫だけれども、普通はその病気ではあまり腫れないはずの唾液腺が硬くしかも両側腫れているのはおかしい。

そこで調べてみますと、フェノバルビタール反応性唾液腺症というものがあります。
いくつかの報告を文献で見てみますと、症状はほぼ一致しますが、一つだけ、その病気では唾液腺嚢腫が起こってはいないようです。
唾液はたくさん出るのですが、下顎や首のところが腫れません。

僕の考えは、フェノバルビタール反応性唾液腺症に伴う唾液腺嚢腫というのが結論でした。
単なる唾液腺嚢腫でも両側どちらが腫れているかがわからないことはよくありますが、本来はどちらかだけの問題です。
しかし、この子は両側の下顎腺が硬く腫れています。

唾液が多く出るという症状は初めからずっとありますが、下顎や首のところが腫れたのはしばらくしてからです。
通常は右か左の片側に起こる唾液腺嚢腫ですが、この子の唾液腺は両側が硬く腫れています。

フェノバルビタールという薬で唾液の量は減る可能性がありますが、腫れは引かないでしょう。

そのような訳で、手術をすることにしました。
ことの次第を飼い主さんに説明しましたが、稀な病気ですし、初めになかった腫れに注目した解決策は理解しづらいものではないかとも考えます。

飼い主さんからは全面的にお任せいただいていますが、これまで結構な時間が経っていますし、これで最後にしなければならないという気持ちで手術計画を立てました。

下顎腺と舌下腺という唾液腺を両側取り除きます。
硬く腫れた下顎腺を取り除き、その後で舌下腺を取り除く。
それを左右で行いました。

手術から1日、2日と過ぎるに連れて、下顎から首の腫れがどんどんと小さくなって行きました。そして吐くことがなくなり、食欲も安定してきました。

もう心配がありません。
すでに退院しましたが、手術後の抜糸はまだこれからです。
そろそろ来院の予定です。
今は再開が楽しみでなりません。

かなり考えて診断を行い、治療することになりましたが、飼い主さんのお気持ちにお応えすることに必死でした。
少し痩せてきていたワンコ、ふっくらとしていてくれるといいのですが。

再開とお別れ - 犬の肝臓がん -

いつもより少しだけゆっくりできそうな休日になりました。


3週間ほど前のことです。
およそ6年ぶりにお会いしたワンコはすでに自分では立つことができない状態でした。

とても優しいおばあちゃんに飼われているそのワンコは、かつてほとんど毎月のように通院をされていました。
「せんせいのところへ行こうね」というと喜ぶんです。
毎回そのようにお話をしてくださっていました。

治療していた病気が落ち着いて来たこともあり、来院がなくなりました。
それを最後にして再開したのはそれから6年ほど経った3週間前のことです。

おばあちゃんはこれまでのことをたくさんお話しくださいました。
ご自身のご病気のために、当院までの移動手段をお持ちでないなかで通院ができなかたこと。
息子さんにワンコのことをいろいろとお任せされていたこと。
ご自宅近くの動物病院であったできごと。
などなど。

おばあちゃんもすっかりとお疲れの様子でした。
一目見て、そのワンコがかなり厳しい状態であることは、おそらく獣医師である僕だけではなく、誰の目からも明らかだったと思います。

まずは何が起こっているか診てみましょう。
血液の検査、レントゲン検査、お腹のエコー検査。
そこでの診断は末期の肝臓の癌ということでした。

おばあちゃんにゆっくりとご説明しました。
よくない話になるだろうと覚悟されていたように見えました。
肝臓の癌ということは想像されてはいませんでした。

この状態で手術はできません。
体力の回復も難しいと思いました。
率直にわかったことと、思うことをお話ししました。
頑張っても1週間くらいだろうと、とても再開のお話ではなくなっていました。

食事をとることができなくなっていましたので、点滴をしたり、どうにか何か食べて欲しかったので、食事を用意したり。
できることは限られていましたが、考えられることを全て提案し、ご希望のものを進めることにしました。

それから2回来院されました。
その2回目の来院が最後になりました。

お電話で最後の様子を教えてくださいました。
せっかく6年ぶりに再開できたにも関わらず、僕の力及ばず、お別れしなければならなくなりました。

そして昨日のことです。
おばあちゃんがご挨拶に来てくださいました。
笑顔でした。

実はあまりよくないことはわかっていました。
そのようにお話をされました。
動物病院を怖がる子はいるでしょ?
でも、うちの子はここが大好きだったんです。
私が病気をしてから、ここまでの足がないものだから連れて来られなくなって。
病気だと思っていたけど、私も息子もあの子は長生きなのだからって、いろいろと治療のことだけを考えていた訳ではなかったんですよ。
肝臓の癌だとわかって、元気がない原因がわかって。
やっぱり仕方がないんだって。
こちらにまた伺おうと思ったのは、だんだんと元気がなくなるこの子の最後に何か喜ぶことしてあげたいなって。
そう思ったときに、大好きだった動物病院に連れて行ってあげようって。
あの子、喜んでました。

獣医師としては元気にすることができなかったことは敗北です。
人として6年の時を経て思い出していただけたこと。
そして何かしらのお役に立てたかも知れないことは、逆に僕の方が慰められました。

きれいなお花に囲まれた最後の写真を見せていただきました。
それを微笑みながら見せてくださったおばあちゃんの、穏やかな表情が印象的です。

TTA という手術 -犬の前十字靭帯断裂-

秋晴れですね。

とっても過ごしやすい日になりました。

先月のお休みに行った千葉県鴨川市。
8年ぶりの再開がありまして、とても楽しい時間を過ごしました。
その中で、「先生、診て欲しい犬がいるんですよー」と言われ、小さなぶどう園に連れて行ってもらいました。
そこは、車で着替えた水着の人たちが海へと向かう道のそばで、植え込みで砂浜は見えませんが波の音が聞こえるぶどう園でした。
そこに、僕のその恩人がぶどう作りを教えているという日焼けしたお父さんがいまして、その横に太っちょの大型犬がいました。

太っちょのワンコはケンケンして歩いています。
後ろ足に問題があることは確かで、そこを診て欲しいとのことでした。
近くの動物病院に行って股関節がおかしいと言われ、手術を勧められているようです。

触診をすると膝に問題があることがわかりました。
結構重度です。
間違いなく前十字靭帯に問題が起こっています。
おそらくは前十字靭帯が切れています。

「前の先生はレントゲン撮ったら股関節がおかしいから手術しておかしくなっている骨を切るって言うんだよね。」
そうお話になりました。
おそらくは股関節形成不全という診断で、大腿骨頭切除(FHO)をするということなのでしょう。
それは危険なことだと思いました。

この大型犬は股関節形成不全が多いことで有名です。
レントゲン検査をされてほお話ですから、それ自体は間違いではないでしょう。
ただ、股関節がおかしいからと言って、ケンケンする原因とは限りません。

股関節はレントゲンですぐに異常がわかるところです。
正常な場合と形が違いますからわかりやすいんです。
前十字靭帯はレントゲンで診断するにはある程度の知識やコツが必要です。

どちらもわかった上で股関節だとなれば問題がないのですが、前十字靭帯の評価ができていないなかで、わかりやすい股関節だけを注目するのは問題があると考えました。

股関節の手術をしても、このケンケンは治らないと判断しました。

膝ですよ。ほぼ間違いないです。
海辺のぶどう畑でじっくりと触らせてもらって、そう判断しました。
そして、ビニルハウスの低木に実っているブドウをいただきました。
甘いブドウでびっくりしました。

水道がここまで来ていないから、ぶどうは洗えないよ。
キョロキョロする僕にお父さんはそう言って笑っています。

ぶどう園のお父さんは都内にお家があります。
鴨川のお家はいわゆる週末を過ごす所です。
動物病院はどこにあるの?
中央区です。

そのようなお話から、近いうちに診察に来られることになりました。
レントゲン検査を再度行って、確かに股関節に問題があることと、やはりケンケンする原因は前十字靭帯であることがわかりました。

ワンコは体重が40kgあります。
前十字靭帯の断裂に用いる手術方法にはだいたい3通りのものはあります。
関節外法、TTA、TPLOです。

世界中で最もよく行われているのは関節外法です。
僕も好んで行います。
今回は体重がありすぎますので、関節外法ではしっかりと治せるか不安がありました。

選んだのはTTAです。
膝から下のいわゆるスネの骨を切って行う手術です。
しっかりとトレーニングを積んでいないとまずやらないと思いますし、ミリメートル単位の緻密な術前計画が必要です。

診察から2週間ほどのところで、手術の日を迎えました。
お父さんは、他の先生が言った股関節という話より、僕の話を聞き入れてくれました。
よし、手術してくれ!
そう言って任せていただけました。

手術方法で相談に乗っていただく先生が鎌倉にあります。
細かな所での相談をしたところ、時間作れるから一緒にやりましょう。
そう言ってもらいまして、二人でやることになりました。

TTA(KYON社)の国際的な講師陣がいます。
この先生はたった2名しかいない日本人講師の一人です。
いろいろと細かなところでテクニックを見せていただきながら、順調に手術が進みました。

術後3日もするとほぼ普通に歩けるようになりました。
完全に良くなるまでにはもう少し時間がかかると思いますが、1週間後にはかるく走れるようにまで回復していました。
(まだ走らない方がよいのですが、ごはんが入ったすばらしい香りを放つ食器を見つけて走ってしまいました。)

TTAはおそらく日本では講習を受けることはできません。
海外でトレーニングを受けた獣医師しかできないものだと思います。
特に大型犬には有効です。
手術をしてから歩けるようになるまでがかなり早いのです。

またぶどう畑を走り回れる日が来ます。
その前に体重を落として欲しいところですが。
今後の回復が楽しみです。

子だくさんのお母さん -クッシング症候群-

もう少しすると暖かい日がくるという予報がとても嬉しくなりました。
それにしても寒いですね。

数年前のことです。
まだ開院して間もない頃でした。
お腹に赤ちゃんがいるお母さんワンコを預かることになりました。
出産介助をご希望でした。

5月の連休中で休診日のために人手が少なく、また確かな予定日が確定していなかったために連日ワンコの体温を測定していました。
出産前に下がる体温まで下がったので泊まり込んでの出産介助でした。
夜中で僕一人だけしかおりませんでしたので、緊急の帝王切開になった場合には看護師にコールすると伝えてありました。

夜中から破水に続き出産がはじまりました。
生まれては体を拭いたり温めたり、呼吸を確認したり。
明け方までかかりましたが、無事に5匹の赤ちゃんが生まれました。

とてもよくお母さんをしてくれて、子供達もお母さんを頼りにして。
飼主さんも大変に頑張って、そして楽しみながら見守っていらっしゃいました。

数年の後、そのお母さんがある日から水をたくさん飲むようになりました。
トイレに行く回数も増えてきました。
典型的なクッシング症候群の症状がみれら、検査をすると明らかな陽性でした。

子供達とは一緒に暮らしていますが、もうみんな立派な成犬になっています。
お母さんは疲れたみたいに、元気がない日も多くなって行きました。
クッシング症候群の治療はお薬を飲むことで行います。
お薬を飲み、ある程度の期間毎に特別な検査をします。
ACTH刺激試験という検査です。

臨床獣医師の中では、治療方法は知らない人はいないと思います。
どの獣医師もある程度の治療経験があるはずです。
そして突然に亡くなってしまうことが多いということも治療経験がある先生ならば知っていることです。

ある大学の先生とお話をしていたとき、クッシング症候群の治療は必要かということが話題になりました。
正直難しい質問だと言われたのを覚えています。
では何のために治療をするのか。

治療を急ぐことでよいことがあるのか、あるいはないのか。
まずは診断をしっかりとすること。
いくつかの検査を組み合わせる必要があり、慎重に行うことが大切で、むやみに薬をはじめるべきではないと考えています。

このお母さんワンコは数年の治療経過の後で、突然のお別れをしなければならなくなりました。
それまではお薬の効果も高く、検査の結果もとても安定していました。
治療が非常にうまく行えていたという実感があります。
それもかなりの長い間。

出会いからの年月を考えると、とても印象深い子でしたし、飼主さんの思いにできる限りお答えしたく、懸命に治療をした結果でした。
その後、飼主さんは子供達みんなの健康診断を希望され、今みんな元気に過ごしています。

しかしながら、お母さんワンコがいなくなったことは本当に悲しいできごとでした。
このことがあってから、治療を急ぐことよりも優先すべきは確定診断で、もし確定した場合、治療開始は慎重に飼主さんとお話をするようになりました。

お薬を飲むとすぐにいろいろな症状が改善し、このままずっと一緒にいられるような、そんな気持ちになります。
しかし、それは表面上の取り繕いかも知れません。
しっかりと今後を見据えて、期待と覚悟でつき合わなければならないこともあります。

水を飲む量が減った。トイレに行く回数が減った。
それだけであとは定期検査を繰り返すだけだと、十分ではないと考えています。

どの子も思入れがあるからこそ簡単な教科書とおりのことだけでいけないと思っています。

臨床獣医師としての少ないながらも内容の濃い体験はどうにか活かしていきたいと思っています。

クッシング症候群

snow
サクラが散った後にも降るんですね。
以前に東北で生活をしていた頃に、サクラ満開の枝に降り積もった雪がとても新鮮だったことを思い出しました。

クッシング症候群という病気があります。
これは腎臓の近くにある副腎からホルモンが過剰にでてしまうことでいろいろな症状が引き起こされる病気です。

主な症状は水をたくさん飲む、そして尿の量や回数が多いというものです。
この、飲水や尿についての症状は他の多くの病気でもみられますので、それだけでクッシング症候群と決めつけることはできません。

診断にはいくつかの方法がありますが、このひとつの検査をすれば100%はっきりと白黒つけられるというものはありません。
大切なことはいろいろなことを総合的に判断したり、いくつかの検査を組み合わせることです。
血液検査、超音波検査、ACTH刺激試験、低容量デキサメサゾン抑制試験と呼ばれるものです。時に、CTやMRIも有用です。

クッシング症候群で過剰になるホルモンはストレスホルモンとも言われます。
これらの検査のときには、できるだけ他のことを止めて、ストレスをかけないようにすることも検査結果正しいものにするためには必要です。

いろいろな情報はインターネットにもあるかも知れません。
今回、この病気をお伝えしたかったのは、この病気になるとどうなるのかということです。

いわゆる予後です。
クッシング症候群にも分類があります。
多くの子(クッシング症候群の子の80-85%)にみられるのは下垂体性副腎皮質機能亢進症(PDH)と呼ばれるものです。
このPDHの場合、ワンコの年齢や治療方法にもよりますが、平均的な生存期間は30か月ほどです。

この病気になってもとても元気に見えるので、予後を意識しないで治療を続ける飼主さんもありますが、実はこのような統計があることも確かなことですので、このことを知りながら治療や検査をすることも大切だと思っています。

当院でも少なからず治療を継続している子がいます。
診断につながる検査はとても簡単なものですが、診断を立てるまでは慎重に行っています。
ひとつの検査結果で短絡的に決めつけるのではなく、いくつかの検査を組み合わせて判断するようにします。
飼主さんと病気のことや治療のことをしっかりとお話をして、そして予後のこともお話をして。

若い子ですと5年以上の生存ができることもあります。
それでもお別れは突然です。

次のブログで、クッシング症候群で僕のなかで印象深い子のお話をご紹介させてもらいますね。

それにしても、今日が休診日でよかった。
雪はもう止んだかな?
皆様お風邪等ひかれませんように。

パルボウイルス感染症という病気

寒くなったので、上着がパーカーだけでは限界になってきました。
今日は日陰ができるくらいの日光は見られないのかも知れませんね。

ちょっと残念ですが、明日の予報は晴れなので期待しています。


先日はじめて来院された仔犬がいます。
はじめて犬を飼うご夫婦がお連れになりました。
かかりつけの動物病院で2日前に予防接種を受けてから体調が悪くなり、
2日目になってもよくならないので治療を受けていらっしゃいます。
夜になっても改善がないとのことでしたが、かかりつけはその日午前中だけの診療。
そこで当院に来院されました。

症状は嘔吐、下痢、そして食欲不振です。
しかも嘔吐が結構続きます。
白血球数や血糖値を調べるために血液の検査をしました。

飼主さんは飼い始めてまだ10日ほどの仔犬ちゃんがなかなか元気にならないので、とても心配をされています。
採血と点滴を行い、結果がでるまで少し待っていただきました。

白血球も血糖値も正常値でした。
とりあえずは腸炎の治療をして帰ってもらいましたが、翌日朝早くに再度来院されました。
夜中ずっと吐いていて、おそらくは寝ていないだろうということでした。
診察台の上で横になっています。
仔犬ちゃんが診察台で横になることはまずありません。
重篤な問題があることは明らかでした。
そこで再度同じ検査をすることにしました。

白血球数が900個/ulという結果です。
これは明らかな白血球減少症です。
月齢、飼われてからの時間、ワクチンの接種歴、症状から考えますと、類症鑑別リストに入る病気はかなり限られます。
しかしながら第一候補のパルボウイルス感染症であれば反応するはずの検査にだけ反応がありません。

この検査は症状がみられてから比較的早い段階ではないと反応がありませんし、早すぎても陰性と出ます。
パルボウイルス感染症という病気にかかると白血球数が減ります。
僕のこれまでの体験からは、2000個/ulくらいまでで再度増加に転じてくれれば助かったことがありますが、この子は900個/ul。
この子の場合は前日の検査で白血球数が正常値でした。
これはまだ感染初期の段階だと考えられます。
パルボウイルス感染症を仮定した場合ではありますが。

それが一気に900個/ulまで減るのはあまり見たことがありません。
そこまで白血球が減って回復した子をみたことがありません。

この子の病気の確定はできませんが、パルボウイルス感染症として治療する以外はなさそうです。
月齢によっては致死率の高い最悪の病気ですが、それを想定して治療をすすめることにしました。

感染症には感染源があります。
どこで感染をしたかということです。
この病気は感染してから症状が現れるまで5-10日ほどの時間がかかります。
飼主さんが飼われる前に感染したことも考えられますし、飼われてから感染したことも考えられますし。

ワクチンの影響も全くないとは言えないところです。
ワクチンはウイルス弱らせて病気が発症しないくらいにしたものです。
それが発症することは理論上はありません。
この仔犬ちゃんが受けたワクチンは当院で使用しているものではありませんが、調べてみると死亡例があることも知ることができます。

先輩獣医師に聞いてみましたら、その先生のところでは3匹くらいの子が同じようなことになったとのことでした。

ロンドンの友人(獣医師)に聞いてみますと、そこではまずワクチンによる発症は見たことがないという返事でした。
そうかどうかを調べる方法はあるけれども、なかなか難しいものです。

未だ飼われる前に感染をしていたのか、ワクチンで引き起こされたのかは不明ですが、何よりこの子はこのとても小さな体で頑張っています。
最近はなかなかみかけることがなかった病気ですが、やはり注意しておかなければならない病気であることは間違いなさそうです。
予防は、ワクチン接種、かならず有効と言える治療はありません。

毛包虫症 - 犬の皮膚病 - 続き

昨日は一日中雨の予報でしたが、午前中のうちに上がってしまいましたねsun
早く梅雨明けして欲しいものです。

以前に来られた毛包虫が見つかったワンちゃん。
およそ2か月の治療の後、すっかりよくなりました。
かゆみを止める薬は結局一度も使うことなく快適な生活ができるようになったとのことで飼い主さんもとても喜んでいらっしゃいました。

しかし、当院に来られるまでは数年間いろいろな治療を試してこられたのことでした。
これだけで完全に解決することを期待したいのですが、そのように単純なものではないかも知れません。
あまり飼い主さんに不安を与えたくはないので、「もし悪くなったら」という仮定のお話は適切ではないと思いますが、獣医師としてお伝えしなければならない情報はありますので、少しだけお話をしましたよ。

それは、このワンちゃんの犬種は皮膚の病気が多いことと、それが特に夏に出やすいこと。
去年までは春の時点でとてもひどい状態だったとのことで、今年の春は快適に過ごせたと安心されていますので、まずは一定の成果はあったと見ています。

あとは夏にぶり返さないか、あるいか新しい変化は起こらないか。
もし夏の間も快適に過ごせたら治療は成功と考えても良いと思います。

よい皮膚のまま夏を乗り切れますようにconfident

男の子、排便が辛そうです。- 会陰ヘルニア -

新緑の季節になりましたね。
まだまだ朝晩は気温が下がりますが、日中は薄着でも外に出られるようになりました。

先日、狂犬病予防の集合注射に参加してきました。
桜の花散る公園でおおよそ1時間の予防注射を行ってきました。
そして当院でも狂犬病予防、フィラリア症予防、ノミ・ダニ予防と予防の季節を迎えています。

平日、土日を含めて、混雑する時間がありますので、参考にしていただけますよう最近の傾向をお伝えいたします。


9時から10時 やや混雑します
10時から11時 比較的待ち時間が短いです
11時から12時 特に混雑します

夕方
5時から6時 やや混雑します
6時から7時 比較的待ち時間が短いです
7時から8時 特に混雑します

排便痛がある男の子が来院しました。
飼主さんのお話によりますと、排泄をしようとするとお尻の横が膨らんで辛そうにするのだそうです。
元気もあまりなく、動かない時間が長くなったとのことでした。

身体検査で会陰ヘルニアと呼ばれるものだとわかりました。
脱腸を呼ばれたりもしますでしょうか。
肛門の横のいわゆるお尻の筋肉が薄くなり、筋肉と筋肉の間が力んだときのお腹の力に負けてしまって裂けてしまうものです。

言葉でうまく説明をするのは困難なのですが、見た目では肛門の横が膨らんで見えるだけです。

特徴は排便痛や排便困難です。
その他の時間は結構元気なことが多いものです。

この病気の場合は手術しか治療方法がありません。
できるだけ早くに手術をすることにしました。

飼主さんは手術としばらくの安静のための入院を希望されました。
お家でみるより安心だから。
そのようにお話され、手術をすることにしました。

薄くなった筋肉によって起こるものですので、手術をしてもまた繰り返してしまうことも多くあります。
できるだけ1回目の手術だけにしてあげられたらという想いで慎重に行います。

いろいろな手術方法が報告されているなかで、僕はほとんど1つの方法だけで手術を行っています。
これまでにおこなってきた子達は幸いなことに再発はしていません。
この方法はある程度安定した効果があると考えています。

今回も同様にその方法で手術を行いました。
この病気は特に男の子に多く、去勢手術をしていない子に多いと言われますが、去勢手術との関係はまだはっきりとわかってはいいません。
しかしながら、男の子特有の動きや活発さ、そして前立腺の肥大などでこの脱腸(会陰ヘルニア)が悪化することもありますから、同時に去勢手術をするようにしています。

手術は無事に終わり、麻酔の覚めも良好でした。
ワンちゃんはとてもおりこうさんで、飼主さんも大変喜んでくださいました。

抜糸のときにお受けしたトリミングが大変に好評で、今日は2回目のトリミングにいらっしゃいました。
元気になって、お気に入りのカットで、外をお散歩するのが楽しいようです。

もう少しすると朝晩でも心地よい気温になり、さらにお散歩が楽しめる時期になりますね。
いつもあまり感情を外に出さないワンちゃんですが、飼主さんは毎回笑顔で来院されるのが印象的ですhappy01

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